会社をたたむとき、登記の次に来るのは在留資格の問題です
株式会社をたたむには、解散の登記と清算結了の登記の二つが要り、そのあいだには最短でも2か月かかります。手続きの流れ、官報公告をどう考えるか、費用の総額と内訳、そして「経営・管理」の在留資格で会社を持っている外国人経営者が同時に考えておきたい在留資格の行き先を整理します。
「会社をたたもうか迷っています。何から考えればいいですか」。事業がひと区切りついた、本国の家族のもとに戻る、別の仕事に移る。きっかけは人それぞれですが、会社を閉じる手続きは、登記を二回すれば終わりというものではありません。
とくに「経営・管理」の在留資格で日本にいる外国人経営者の方は、会社をたたむと、ご自身の在留資格をどうするかという問題が同じタイミングでやってきます。登記と税金の段取りに気を取られているうちに、在留資格のほうが後回しになってしまう。ご相談を受けていて、いちばん多いのがこの形です。
この記事では、株式会社をたたむときの流れと費用を、行政書士事務所アンドシードでお受けしている範囲とあわせて整理します。会社の手続きと在留資格の手続きを一つの工程として見られることが、弊所がこの業務をお受けしている理由です。
「解散」と「清算結了」は別の手続きです
会社をたたむ手続きは、二段階に分かれています。
最初が解散です。株主総会で会社を解散すると決め、同時に、会社の後始末を担当する清算人を選びます。多くの小さな会社では、それまでの代表取締役がそのまま清算人になります。解散した日から2週間以内に、解散と清算人選任の登記をします。
解散しても、会社はまだ消えていません。ここから清算が始まります。取引を終わらせ、売掛金を回収し、借入金や未払金を支払い、残った財産を株主に分けます。この期間の会社は「清算株式会社」と呼ばれ、清算のための活動しかできなくなります。
清算がすべて終わったら、清算人が決算報告を作り、株主総会で承認を受けます。承認の日から2週間以内に清算結了の登記をして、はじめて会社の登記記録が閉じられます。
最短でも2か月、通常は3〜4か月かかります
解散から清算結了までには、どうしても縮められない期間があります。
会社法は、清算株式会社が債権者に対して、2か月以上の期間を定めて「債権があれば申し出てください」と知らせることを求めています(会社法499条)。この期間が終わるまでは、原則として債務の弁済もできません。そのため法務局の実務でも、解散の日から2か月が経つ前の清算結了登記は受理されません。
実際には、解散の決議に向けた準備、税理士による解散時の決算、財産の換金や支払い、決算報告の作成と承認がこれに加わります。解散の決議から清算結了の登記まで、通常は3〜4か月を見込んでおいてください。「来月には会社を閉じて帰国したい」というご相談もいただきますが、その場合は清算人が日本を離れたあとの進め方まで含めて、最初に段取りを組む必要があります。
官報公告を、どう考えるか
解散のご相談で必ず話題になるのが、官報公告です。ここは、弊所の考え方と事実を分けて書いておきます。
解散した会社は、官報に「債権者の方は申し出てください」という公告を出し、さらに会社が把握している債権者一人ひとりに個別の催告をすることになっています。これは会社法499条が定める債権者保護の手続きです。
一方で、清算結了登記の申請には、官報公告をしたことを証明する書類を添付する必要がありません。そのため、実務上は官報公告を行わずに清算を終える例が少なくありません。
ただし、これは「やらなくて大丈夫」という意味ではありません。公告を省いて清算を終えたあとに、知らなかった債権者が現れた場合、清算人が職務を怠ったとして、その債権者から責任を問われる可能性があります(会社法487条)。取引先が多い会社、過去にさかのぼって請求が来るおそれのある会社ほど、公告の意味は大きくなります。
官報公告を出す場合の費用は、1行3,589円(税抜)です。株式会社の解散公告は22字×11行が目安で、およそ43,400円(税込)になります。
弊所では官報公告の手続きは行っておらず、下でご案内する費用にも含めていません。公告を出すかどうかは、会社の取引の状況を踏まえて、お客さまご自身でご判断ください。判断の材料になる事情は、面談のなかで一緒に整理します。
在留資格は、会社と同じ速さでは待ってくれません
ここからは、「経営・管理」の在留資格で会社を持っている方に向けた話です。
「経営・管理」は、日本で会社を経営する活動に対して許可されている在留資格です。会社を解散すれば、その活動は清算に向けたものへと変わり、清算が結了すれば会社そのものがなくなります。在留カードに書かれた期限がまだ先であっても、その期限までそのまま日本にいられるとは限りません。在留資格に当たる活動を正当な理由なく3か月以上行っていない場合は、在留資格の取消しの対象になり得ます。
そのため、会社をたたむと決めた段階で、次のどれに進むのかを決めておくことをおすすめします。
帰国する
日本の会社に就職し、仕事の内容に合った在留資格(技術・人文知識・国際業務など)に変更する
配偶者の在留資格など、ご家族の状況に応じた在留資格に変更する
もう一度、別の事業で「経営・管理」を取り直す
最後の選択肢については注意が必要です。「経営・管理」の許可基準は2025年10月16日から大きく変わり、資本金等3,000万円以上、常勤職員1名以上の雇用、経営に関する経歴や日本語能力などが求められるようになりました。以前と同じ規模で会社を作り直せば取れる、という前提は成り立たなくなっています。
どの道が取れるかは、学歴や職歴、ご家族の状況、これまでの在留の経過によって変わります。結論が一人ひとり違うため、この記事で「この場合はこうなります」と言い切ることはできません。大切なのは、解散の登記を出す前に在留資格の見通しを立てておくことです。
あわせて、出入国在留管理庁への届出も必要になります。会社での活動をやめたときや、清算が結了して会社がなくなったときは、その会社で活動していた方ご本人が、14日以内に所属機関に関する届出(「経営・管理」の方は活動機関に関する届出)をします。会社で外国籍の従業員を雇っていた場合は、その方々の在留資格も会社の閉鎖に影響を受けます。退職の書類をきちんと渡しておくことが、その方々が次の勤め先で在留資格の手続きをするときの助けになります。
費用は、総額で198,230円です
金額はすべて税込です。このうち弊所にお支払いいただくのは99,000円で、残りの99,230円は登記を担当する提携司法書士の費用です。登録免許税などの実費も、この金額に含まれています。
お支払いの総額 198,230円(税込) 弊所へのお支払い 99,000円提携司法書士へのお支払い 99,230円(登録免許税等の実費込み)
弊所へのお支払い 99,000円
行政書士報酬は90,000円(税抜)、消費税9,000円を加えて99,000円です。この報酬に含まれるのは、次の四つです。
業務 | 内容 |
解散スケジュールの設計と工程管理 | 解散の決議日から清算結了の登記までの段取りを組み、進み具合を管理します |
株主総会議事録などの素案作成 | 解散と清算人の選任を決める回と、決算報告を承認する回の2回分です |
司法書士・税理士・社会保険労務士との連携窓口 | 各専門家とのやり取りを弊所がまとめてお引き受けします |
面談と月次の進捗報告 | ご依頼時の面談のほか、清算結了まで毎月、進み具合をご報告します |
提携司法書士へのお支払い 99,230円
登記の申請は、弊所と提携している司法書士が行います。行政書士は登記申請の代理ができないためです。
項目 | 金額 |
司法書士報酬:解散及び清算人選任登記 | 25,000円(税抜) |
司法書士報酬:清算結了登記 | 25,000円(税抜) |
消費税(報酬小計50,000円に対して) | 5,000円 |
登録免許税:解散 | 30,000円 |
登録免許税:清算人選任 | 9,000円 |
登録免許税:清算結了 | 2,000円 |
実費:登記情報の閲覧 | 330円 |
実費:登記事項証明書 2通 | 980円 |
実費:送料 | 1,920円 |
合計 | 99,230円 |
報酬に含まれないもの
会社の状況によっては、上の四つのほかに手続きが必要になります。これらは別料金です。あとで行き違いが生じないよう、金額とあわせて先に書いておきます。
項目 | 金額 | 必要になる場合 |
債権者への催告書 一式 | 20,000円(税抜) | 会社に債権者がいる場合のみ |
許認可の廃止・廃業届 | 1件 30,000円(税抜) | 古物商、飲食店営業など、許認可を持っている場合 |
退職関係書類 一式 | 20,000円(税抜) | 従業員がいる場合 |
出入国在留管理庁への届出 一式 | 別途お見積り | 所属機関に関する届出、中長期在留者の受入れ終了の届出 |
在留資格の変更など(経営・管理から他の在留資格へ) | 別途お見積り | 会社をたたんだあとも日本に在留する場合 |
在留資格の変更は、会社の解散とは別の入管案件としてお見積りします。ただ、工程は解散の段取りと同じ表の上で組み立てます。登記の日程と在留資格の申請時期を別々に考えないことが、この業務の中心だと考えています。
このほか、次の費用は弊所・提携司法書士とは別に、それぞれの専門家へお支払いいただくことになります。
税務申告:解散した事業年度と、清算中の事業年度のそれぞれで申告が必要です。税理士の報酬が別途かかります。
社会保険・労働保険の廃止手続:社会保険労務士の報酬が別途かかります。
官報公告を出す場合の費用(およそ43,400円)も、上の総額には含まれていません。
顧問の税理士や社会保険労務士がいらっしゃる会社は、その方と連携して進めます。いらっしゃらない場合は、弊所からご紹介することもできます。
お打合せは日本語で行っています。
たたむ前に、譲るという選択肢も
会社をたたむのではなく、誰かに引き継いでもらうという道もあります。株式を売り渡せば、会社は取引先や許認可、従業員との雇用契約を抱えたまま、新しい持ち主のもとで続いていきます。解散・清算より手続きの期間が短くて済むことも多い方法です。
引き継ぎ手の心当たりがある場合は、会社を譲る・譲り受けるとき、動かすのは「株式」ですもあわせてお読みください。
よくあるご質問
会社をたたむには、どのくらいの期間がかかりますか?
解散の登記から清算結了の登記までは、最短でも2か月かかります。解散の日から2か月が経つ前は、清算結了の登記が受理されないためです。準備や税務の手続きを含めると、解散の決議から完了まで通常3〜4か月を見込んでください。
官報公告はしなければいけませんか?
解散公告は会社法499条が定める債権者保護の手続きです。一方で、清算結了登記の添付書類ではないため、実務上は行わない例が多くあります。ただし、省いた場合に清算後になって債権者が現れると、清算人が責任を問われる可能性があります(会社法487条)。取引の状況を踏まえてご判断ください。弊所では官報公告の手続きは行っていません。
費用は全部でいくらかかりますか?
弊所の報酬99,000円(税込)と、提携司法書士の費用99,230円(登録免許税等の実費込み)をあわせて198,230円です。債権者への催告、許認可の廃止届、退職関係書類、出入国在留管理庁への届出、在留資格の変更は別料金です。税務申告は税理士、社会保険・労働保険の廃止手続は社会保険労務士の報酬が別途かかります。
経営・管理の在留資格で会社を持っています。会社をたたんだら、在留カードの期限まで日本にいられますか?
いられるとは限りません。在留資格に当たる活動を正当な理由なく3か月以上行っていない場合は、在留資格の取消しの対象になり得ます。帰国するのか、就職して別の在留資格に変更するのかなど、解散の前に見通しを立てておくことをおすすめします。
会社をたたんだあと、日本で就職して在留資格を変えることはできますか?
仕事の内容とご本人の学歴や職歴が合えば、技術・人文知識・国際業務などへの変更を検討できます。ただし、結論は一人ひとりの事情によって変わります。在留資格の変更は、会社の解散とは別の入管案件としてお見積りします。
登記の申請も行政書士事務所アンドシードにお願いできますか?
登記の申請は、弊所と提携している司法書士が行います。行政書士は登記申請の代理ができないためです。弊所は解散の段取りと工程の管理、株主総会議事録などの素案作成、各専門家との連携窓口を担当します。
この記事について
本記事は2026年9月時点の会社法、商業登記の実務、出入国在留管理庁の運用に基づいて書いています。金額は株式会社を前提にしたものです。解散・清算の進め方は、会社の債権債務の状況や許認可の有無、従業員の有無によって変わります。在留資格についても、一人ひとりの事情によって結論が変わります。会社をたたもうかと迷っている段階からご相談いただけますので、行政書士事務所アンドシードまでお問い合わせください。
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この記事は、当事務所の記事サイト「外国人雇用と在留資格のノート」にも掲載しています。掲載元:https://lp.andceed.com/kaisha-kaisan-seisan/
English version: https://lp.andceed.com/en/kaisha-kaisan-seisan/