外国人材が辞めない会社は、採用の時点で「2号への道」を見せている
外食の特定技能1号が新規受け入れを止めてから半年。人が職場を選ぶとき、月給の差より先に見ているのは「この会社で特定技能2号を目指せるか」です。2号で変わること、要件、会社が採用の段階から用意できることを整理します。
いま何が起きているか
特定技能の「外食業分野」では、2026年4月13日から1号の新規受け入れが止まっています。出入国在留管理庁と農林水産省の発表(2026年3月27日)によると、外食業の1号で日本にいる人は2月末で約4万6千人(速報値)で、受け入れの上限である5万人を5月ごろに超える見込みとなりました。そのため、4月13日以降に受け付けた在留資格認定証明書の交付申請は交付されず、ほかの在留資格から外食業の1号への変更も原則として認められていません。
一方で、すでに外食業の1号で働いている人の転職に伴う変更申請や、在留期間の更新は、これまでどおり審査されています。新しい人は入ってこないが、いまいる人は動ける。この状態が半年続いています。
時事通信(2026年10月8日)は、外国人材の都市部への転職が増え、地方の外食業で人手不足が強まっていると報じました。また毎日新聞(同日)は、人手不足が深刻な病院や施設などの「給食」について、別の分野に組み込んで受け入れを再開する案を報じています。給食の扱いは、正式な決定が出た段階であらためてお知らせします。
人が動く理由は、給与の差より「2号への見通し」
働く人の側から見ると、特定技能の1号と2号はまったく違う在留資格です。出入国在留管理庁の資料では、1号は在留できる期間が通算で5年までで、家族の帯同は基本的に認められていません。2号は更新を重ねることができ、要件を満たせば配偶者と子どもを日本に呼ぶことができます。
永住許可との関係も違います。永住許可のガイドライン(2026年2月24日改訂)は、原則として10年以上の在留のうち、就労資格または居住資格で5年以上の在留を求めていますが、この就労資格から技能実習と特定技能1号は外されています。2号で在留した期間は、この5年に数えられます。
つまり、1号のままでは「5年たったら帰国する」働き方になり、2号に進めれば「家族と日本で暮らし続ける」道が開けます。月給で数万円の差があっても、その差より、この会社にいれば2号を目指せるかどうかの方が大きな判断材料になるのは自然なことです。人が都市部に動く理由を、給与水準だけで説明しきれないのはこのためだと私たちは考えています。
2号に必要なもの(建設・外食の場合)
2号には、分野ごとに試験と実務経験の両方が求められます。
建設分野では、建設分野特定技能2号評価試験、技能検定1級、または技能検定の単一等級のいずれかに加えて、建設現場で複数の技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する「班長」としての実務経験が必要です。
外食業分野では、外食業特定技能2号技能測定試験と日本語能力試験N3以上に加えて、飲食店で複数のアルバイト従業員や特定技能外国人などを指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する立場(副店長、サブマネージャーなど)での実務経験が必要です。
どちらの分野でも、求められているのは「指導する立場の経験」です。本人がどれだけ努力しても、会社がその役割を任せなければ要件は満たせません。必要な経験の期間や証明のしかたは分野ごとの運用要領で定められているので、計画を立てる前に確認しておく必要があります。
会社が今日からできること
一つ目は、採用の段階で2号までの道筋を見せることです。入社何年目にどんな役割を任せるのか、試験はいつごろ受けるのかを、面接や雇用条件の説明の場で具体的に伝えます。約束ではなく「この会社ではこう育てる」という計画として示すことが大切です。
二つ目は、要件となる経験を積める配置をすることです。建設なら班長として複数の技能者をまとめる役割、外食なら副店長やサブマネージャーとして店舗運営を補助する役割を、実際に任せます。あわせて、辞令や職務の記載、シフト表など、その役割にあったことを後から示せる記録を残しておくと、申請の段階で困りません。
三つ目は、試験の準備を仕事の一部として支えることです。受験の時期から逆算して勉強の時間をとれるようにしたり、外食であれば日本語の学習を後押ししたりすることは、そのまま定着の理由にもなります。
人が辞める理由と残る理由は、多くの場合、同じところにあります。2号への道筋を示せる会社は、それだけで働く人にとって「残ることに意味がある職場」になります。
アンドシードがお手伝いできること
行政書士事務所アンドシードは、名古屋で在留資格の申請を専門に扱っています。特定技能1号から2号への在留資格変更許可申請はもちろん、2号の要件に照らして、いまの配置や職務の記録で実務経験を示せるかどうかの確認、育成計画の整理もお手伝いします。
評価制度や賃金規程、職務分掌の見直しは社会保険労務士の先生の領域です。顧問の先生がいらっしゃる会社では、先生と役割を分けながら、在留手続きの側から支える形をとっています。社労士・税理士の先生方からの、顧問先についてのご相談もお受けしています。
特定技能1号のまま5年がたつと、どうなりますか?
1号で在留できる期間は通算で5年までです。それまでに2号への変更などの手続きをしなければ、1号のままでは日本で働き続けることができません。2号を目指すなら、試験と実務経験の準備を早めに始める必要があります。
2号になれば、家族を日本に呼べますか?
要件を満たせば、配偶者と子どもの帯同が認められます。1号では家族の帯同は基本的に認められていません。
班長や副店長としての経験は、どうやって証明しますか?
分野ごとの運用要領で定められた書類で示します。日ごろから辞令や職務の記載、シフト表などで、指導する立場にあったことが分かる記録を残しておくことをおすすめします。
外食の受け入れ停止中でも、すでに働いている1号の社員は転職できますか?
出入国在留管理庁の発表では、外食業の1号で在留中の人の転職に伴う変更申請は、通常どおり審査するとされています。在留期間の更新も同様です。
出典:出入国在留管理庁「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」(2026年3月27日)、同「外食業分野」「建設分野」、同「特定技能ガイドブック」、同「永住許可に関するガイドライン」(2026年2月24日改訂)、国土交通省「建設分野における特定技能外国人の受入れ」。報道:時事通信(2026年10月8日)、毎日新聞(2026年10月8日)。
――――
この記事は、当事務所の記事サイト「外国人雇用と在留資格のノート」にも掲載しています。掲載元:https://lp.andceed.com/tokutei-ginou-2go-teichaku/
English version: https://lp.andceed.com/en/tokutei-ginou-2go-teichaku/